つるかめ算数

鶴と亀が合わせて12羽、足の合計34本いる。鶴は何羽いるだろう。

(4×12ー34)÷(4ー2)=7

答えは7羽。中学受験を知らない人がこの式を見るとたいてい驚く。どうしてこんな式がいきなり成り立ち、正しい答えが出てくるのだろう。他にもさまざまな特殊な文章題が中学受験の算数にはあり、そのどれも不可思議な解放で答えを導き出す。きっと中学受験と言うのはよほど特別な世界なのに違いない。そして大人といえど、小学生のスピードや発想についていけず、翻弄される。こんなことがあっていいのだろうか。

正負の数の知識と、xやyを使った方程式を知っていれば、中学生以上の者であればこれは「連立方程式を立てるんだ」とすぐに察しがつく。そして、簡単に解くことができる。

数学は厳密に体系化された、数学のために成り立つ世界を作り出している。自然界の法則を記述する道具としても利用され、なくてはならない大切な人類の遺産。

ここであげた鶴亀算は、次のような特徴を持っている。

まず第一に「初期設定」を行う。4×12(=48)で、4本足の亀が12羽すべてで、求める鶴は0羽だったとしたときの、合計の足の本数を算出。

それから鶴を1羽増やすと同時に亀を1羽減らすとどうなるかを観察する。4ー2(=2本)ずつ合計本数が減る様子を確認する。

すると実際の合計本数である34本にいずれ一致するまで操作を繰り返し、48ー34(=14本)の差がいずれ0となる、14÷2=7(回)の操作が終わった時。7回鶴を増やしたのだから、鶴は7羽となる。

「初期設定」をしなければ、この特殊算は始まらないこと。そうして初期設定と実際の数値の差がなくなるまでの規則的な変化を観察し、操作を繰り返すことで答えにたどり着くという解法なのだ。

連立方程式を立てて解く方がはるかに簡単だ。思考する過程がほぼ省ける。

では算数というのは、負の数や方程式を使うことを回避するためにわざわざ編み出された、中学校に上がるまでに使用する一時的な、不自由な学問なのだろうか。

いや、答えを得るための方法として、これは立派な解法ではないだろうか。初期設定を行うという、少し周りくどいと一見思える過程を通じて、数値が規則的に変化していく様子を観察して正しく答えまで行き着くことが確かに理解できるものである。

ただ、まだ9歳から12歳くらいまでの小学生がこの仕組みを理解して自分のものにするには少々厳しい鍛錬が必要だということ。1週間のレクチャーですぐ身につけてそれをいつでも利用して解くことができるものではない。理解できるまで何度もやり方を教えなければ、そんなに簡単に身につく物ではない。

一番危険なのは、この仕組みを理解しないまま、まるで裏技のような感覚で数字だけを操って解いている状況である。何をやっているかわからないまま答えだけはあっている。そして、大人は子供に理解させることを放棄し、「中学校になると方程式を習うから、今はどうしてそうなるのか知らないままでも別にいいよ」と言いくるめていること。